『田園の詩』NO.49 「シラサギとカラス」(1996.7.9)


 田植えも無事に終わり、農家の人々は今一息ついているところです。水田にきれいに
並んで植わっている苗も、少しずつ株を増やししっかりして来ました。

 幾筋もの緑の線の中に、シラサギが舞い降りて餌を探している様は、まさにこの時期の
田園風景の典型ともいえる一光景です。


       
     我が家の付近では、群れで行動する姿を見ることは、少なくなりました。
      出かける時に必ずカメラを持ち歩きやっと写すことができました。(08.6.26写)


 よく見ると、シラサギはまるで苗を踏まぬよう注意するかのごとく、その長い足でゆっくり
歩を進めます。そして、長い首や嘴で、これまた苗に触らぬように、上手にカエルなどを捕
まえています。

 こんなゆかしく、人々に好意を持って迎えられているシラサギも、年々少なくなっている
ような気がします。我が家の付近ではまだ見かけますが、一山越えた谷あいの地区には、
今年は飛んで来ないとのことです。

 その代り、カラスが水田の中に入るらしいのです。やはりカエルなどの餌を取るためで
しょうが、カラスはその短く太い足で走り回り、苗を踏み荒らします。シラサギに水田を荒
らされたという話は聞いたことがありませんが、カラスの被害は大きいようです。

 このカラスの悪さについていえば、数えればきりがありません。「卵を取られるのは毎日
のこと」とは鶏舎を営む人の言。目の届かぬ山際で畑を作っている人は「油断すると野菜
や果物はほとんどやられてしまう。特に、トマト、トウモロコシ、スイカは大好物。キュウリ
やナスビまでもつつかれる。」と困り果てています。

 我が家の畑≪百菜園≫は、私が散歩方々いつも見回っているので、カラスは寄り付けま
せん。しかし、裏山のちょっと離れたところにあるビワが、全部食べられてしまいました。
もう少しで熟れるところだったのに、残念でなりません。

 カラスがこんなに我が物顔に振る舞えるのも、過疎化が進み、追い払う人間が少なくなっ
たからかな、と思います。童話で歌われているような親しみのあるカラスの姿は、今の田舎
にはありません。                       (住職・筆工)

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